■ 豚 熱 (CSF)(2021.4.15更新)
CSF(Classical swine fever)は、CSFウイルスの感染による豚とイノシシの病気で、人には感染しません。CSFの原因ウイルスは、フラビウイルス科ぺスチウイルス属に分類されます。
強い伝染力と高い致死率が特徴で、家畜伝染病予防法において家畜伝染病に指定されています。このため、発生した農場では、飼養豚等を対象に防疫措置を行うこととされています。
■ 国内での発生
明治20年(1887年)、我が国で初めて確認され継続して発生していましたが、昭和44年(1969年)に生ワクチンが開発されて以降は、平成4年(1992年)を最後に国内での発生は無くなりました。
なお、昭和44年(1969年)から平成18年(2006年)までの37年間にわたって国内でほとんどの豚に使用されていたこのワクチンは、国内のCSF撲滅宣言にあわせて使用が中止されました。
しかし、平成30年9月に国内の養豚農場で26年ぶりにCSFの発生が確認され、その後も中部圏から関東圏に及ぶ広範囲において、養豚農場での発生や野生いのししへの感染が確認されている状況です。
三重県内では、令和元年6月26日以降、野生いのししへの感染が確認されており、同年7月24日には、県内養豚農場において昭和42年以来のCSFの発生が確認されました。
■豚 熱 (CSF)の防除法
本病の診断は、CSFに関する特定家畜伝染病防疫指針にもとづき発症または死亡豚を検査材料とした遺伝子検査等で総合的に行います。県の機関で陽性反応が確認され、国の機関で感染家畜として確定された場合は、発生農場の飼養豚をすべて処分するとともに、汚染物品の埋却や畜舎の消毒等の防疫措置を実施します。また、周辺農場の豚等の移動を制限し飼育豚の精密検査等を実施して、新たな感染の広がりを未然に防ぎます。
その他、感染野生いのししが確認された県では、飼育豚に対する生ワクチンの使用再開や野生いのししへの経口ワクチンの野外散布等、CSFウイルスの鎮静化を進めています。
■ インフルエンザウイルス
■ インフルエンザウイルス
ヒトに感染するインフルエンザウイルスにはA,B,Cの3型があり、流行的な広がりを見せるのはA型とB型です。鳥類とヒト以外の哺乳動物には、インフルエンザA型ウイルスのみが感染するので、いわゆる動物由来感染症としては、インフルエンザA型ウイルス感染症を指します。
インフルエンザA型ウイルスはヒトを含む哺乳動物と鳥類に広く分布しA型ウイルスはウイルスの粒子の表面にあるH1~H16までの赤血球凝集素(HA)およびN1~N9までのノイラミダーゼ(NA)の組合せにより144の血清型に細分されています。
ことにカモはすべてのHA(H1~H16)とNA(N1~N9)の亜種ウイルスを保有していると考えられていますが、インフルエンザに感染しても症状を示すことなく、腸管でウイルスを増殖させるため、カモの集まる湖沼には多くのインフルエンザウイルスが糞便とともに排出され、これらの水を介して、他の水禽類および哺乳動物に伝播すると考えられます。
■ 家きん農場での発生
わが国では1925年の発生例からH7N7のインフルエンザウイルスが分離されて以降の発生はありませんでしたが、2004年1月山口県で鳥インフルエンザウイルスH5N1亜型による発生が79年ぶりに確認されました。
その後、渡り鳥の飛来する秋~春シーズンに毎年のように国内発生が確認されていましたが、平成30年1月の香川県さぬき市での発生以降は国内農場での発生はありません。
一方、アジア各国では、引き続き発生が報告されており、アジア地域からの渡航者から不正に持ち込まれた肉及び肉製品から多数の鳥インフルエンザウイルスが分離されています。
■ 鳥インフルエンザの防除法
本病の診断は、高病原性鳥インフルエンザ及び低病原性鳥インフルエンザに関する特定家畜伝染病防疫指針にもとづき発症または死亡鳥を検査材料とした遺伝子検査で行います。
県の機関で陽性反応が確認され、国の機関で感染家畜として確定された場合は、発生農場の飼養家きんをすべて処分し汚染物品の埋却や畜舎の消毒等の防疫措置を実施し感染の広がりを未然に防ぎます。
■ 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
■ 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)とは
2011年に中国の研究者らによって報告された比較的新しい疾病です。日本では2013年1月にヒトでの初報告例がありました。
原因はブニヤウイルス科フレボウイルス属のSFTSウイルスによる感染症で、ウイルスを保有しているマダニに刺咬されることにより感染します。
2017年にはネコ、チーター、イヌでのSFTSが報告され、同年にネコからヒトに感染したと考えられる事例も報告されています。
したがって、現在では人獣共通感染症として動物飼育者や獣医療関係者向けに注意喚起がなされています。
(写真はつまようじと飽血タカサゴキララマダニ)
・症状
感染後6~14日の潜伏期を経て、疾病名のとおり、ヒト・動物とも発熱と著明な血小板減少、白血球減少、AST・ALT・LDHの上昇が起こります。臨床的には発熱に加え消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛等)が多くの事例で確認されています。その他頭痛、筋肉痛、神経症状、リンパ節腫脹、皮下出血、下血等も報告されており、死亡例もあります。
・治療および予防
現在のところワクチンも抗ウイルス薬もないため、対症療法が中心となります。予防はウイルスを体内に入れないことが中心となるため、ヒト・動物ともマダニに刺されないことが最大の予防方法です。ヒトの場合は虫よけスプレーや長袖長ズボン等でマダニの付着・刺咬を防ぎましょう。
なお、発症したヒト・動物の体液や糞尿にはSFTSウイルスが含まれているとされており、ウイルスを含む体液等が傷口や粘膜等に付着すると感染の危険があります。獣医療関係者が患畜を取り扱う際は手袋・防護衣等のPPEによる感染予防措置を取ってください。
日本紅斑熱
・日本紅斑熱とは
1984年に報告されたRickettsia japonicaによるリケッチア感染症です。
病原リケッチアを保有するマダニに刺咬されることにより感染します。
すべてのマダニが病原体を保有しているわけではなく、ヒトの日本紅斑熱患者発生地域の調査で病原体保有マダニは全体の数%であるといわれています。現在のところ、ヒト以外の動物での日本紅斑熱症例はよくわかっていませんし、マダニ以外の動物等からヒトに感染する経路も見出されていません。
(写真はつまようじとフタトゲチマダニ)
・症状
感染後2~8日の潜伏期を経て、発熱・発疹が生じます。また、マダニに刺咬されることによって感染するため、体表のどこかにマダニの刺し口が存在します。血液所見では白血球、血小板の減少とCRP、ST、ALTの上昇が認められます。重症化すると死に至る可能性もありますので早めの治療が肝要です。
・治療および予防
テトラサイクリン系の抗生物質による治療が有効です。ただ、テトラサイクリン系は第一選択薬とされない場合が多いため、マダニ刺咬あるいはその可能性(山遊び、沢歩き等)を受診時に伝えることが迅速な治療につながります。現在のところワクチンはありません。予防はマダニに刺されないことが最大の予防方法となります。虫よけスプレーや長袖長ズボン等でマダニを防ぐ、マダニが付着している可能性のある衣類等は早めに洗濯するなどしてマダニを落としてしまう等で予防しましょう。